外食チェーン店で見られるあの絵画の秘密
2018-01-28
小松絵画教室 暇つぶしの美学
今の時代、私たちは多くの展覧会で様々な絵画を自由に見ることができます。
時代も国も宗教も超えて、知識がなくても、好きでも嫌いでも絵を楽しむことができます。
さらに描き手として、自由に自己の表現ができるという幸せな時代にいます。
しかし、絵画を自由に描けない時代
というものが確かにありました。
ボッティチェリという画家をあなたはご存知でしょうか?
一度は目にしたことが必ずあると思います。
なぜなら〝あの飲食店に飾られている″あの絵だからです。
今回のテーマは
『外食チェーン店で見られるあの絵画の秘密』
●ボッティチェリとは…

サンドロ・ボッティチェリ
初期のルネサンスの代表的な画家の一人
皮なめし職人の四男として生まれる。
画家を志し、15歳のとき
当時のフィレンツェを代表する画家フィリッポ・リッピに師事し
その後25歳のときに独立。
柔らかく美しい流麗な線描写が特徴的。
ボッティチェリという名前なのですが
実は、本名ではありません。
本名はアレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ。
ボッティチェリというのはなんと、あだ名。
彼の兄が太っていたことから、『小さな樽=ボッティチェリ』と呼ばれていたという説があります。
後世まであだ名…
可哀そうというか、愛されていたというか…。
ボッティチェリは若い頃から成功した画家でしたが、生涯独身で
晩年はパトロンを失い、貧困の末ついには絵が描けなくなってしまいます。
今回は超有名な2点の絵画をご紹介したいと思います。
●祝福の絵?それとも…

《春》サンドロ・ボッティチェリ
この絵、あなたは見たことありますか?
この絵は独立した数年後に描かれたといわれています。
ボッティチェリにこの絵を制作を依頼したのは
ルネサンス期の芸術家のパトロンとして名高い豪華王とも言われていたロレンツィオ・メディチ。
この当時ヨーロッパでは〝絵画=宗教画″であったため、画家が自由な発想で絵を描くことはタブーとされていました。
そこに風穴を開けようと、ロレンツィオ・メディチは自身の財力で新しい芸術を発展させようとし
その芸術運動の中心人物が、ボッティチェリでした。
そんな中描かれたこの《春》。
これはパトロンのロレンツィオの結婚記念として描かれたもの。
画面上のオレンジはロレンツィオの家系、メディチ家のシンボルであり
結婚を象徴するものでもあります。
人物は古代ギリシャの神々で
中央の女性は愛の女神ヴィーナス

画面一番右端の西風の神ゼフュロス
その隣に妖精のクロリスがいます。
ここではゼフュロスがクローリスに求愛をしているシーンです。
そしてクローリスの隣の女性はなんと
クローリスの結婚後の姿で、花の神フローラです。
ポケモンでいう進化系みたいなものでしょうか…
ここではさらりと時間の経過が描かれています。
しかしこの西風の神ゼフュロスは
なぜこんな色で描かれているのでしょうね…。

そして
画面左側のこの三人の女性は〝三美神″といわれるもので
〝愛欲・純潔・美″のそれぞれの姿です。

上のキューピッドはよく見ると実は目隠しをしているんです。
これは〝盲目の愛″を表しているといわれています。
その一方で一説では…
キューピッドの矢が三美神の純潔の上に狙いを定めているように見えることから
愛の揺らぎ・破壊というネガティブな要素も持っているといわれています。

一番左端のこの男性は所説あります。
驚くことに、実際誰だかよくわかっていないのです。
一つはメルクリウス(マーキュリーまたはヘルメス)という説
これは旅人や商人の守護神で商業の神様です。
人間に富を与える神ともいわれています。
詳しいことは割愛させて頂きますが…
『対立しているものを結びつける象徴・新しい光・無意識の心的世界の一つの形』
などを意味しているのではないか…
しかし、このメルクリウス(マーキュリーまたはヘルメス)は
賭博・盗みの守護神でもあります。
ここでもネガティブな隙間風みたいなものが感じられますね。
そして一番驚くことがあります。
画家としては驚愕、と言ってもいいと思います。
それは何か?
この絵の周囲の風景に、なんと
500種類以上の植物、そして
190種類以上の花が描かれているのです。
実際に、花のほうは100種類以上存在している花だと確認されています。
正直クレージーとしか言いようがありません。
描く方も描く方ですが、調べる方も調べる方だと思います。
これは個人の感想です…。
こんなにも種類があるわけですから
花言葉も、花の意味も、良い意味のものもあれば
もちろん
祝福の絵には到底、相応しくない意味のものもあります。
意図して描いたのか、それとも画家の技巧を象徴したかったのか。
愛という美しい世界に見え隠れする不穏な謎が今もなお
世界の研究者や批評家たちの議論の的になっています。
ボッティチェリはこの絵に題名をつけていなかったといわれています。
今使用されている《春 (プリマヴェーラ)》というのは
美術史家のジョルジョ・ヴァザーリが命名したといわれています。
ここまでを踏まえて
〝愛と生命の息吹に満ち溢れた作品″と見るか
それとも別の角度から改めて覗いてみるかは、あなた次第です。
●外食チェーン店で見る、あの名画

《ヴィーナスの誕生》サンドロ・ボッティチェリ
この絵画、どこかで見たことありませんか?
そう、某イタリアンチェーン店で出会えると思います。
ここからお話することは…
今後、あの絵画をどう見るかは自己責任です…。
では、どうぞ↓↓
この《ヴィーナスの誕生》ですが
実は【誕生のシーン】を描いたわけではないのです。
◎そもそもヴィーナスとは?
ギリシャ神話の一説です。
『全宇宙の根源の王とされるウーラノスは、大地の女神ガイアを手に入れようとしていた。
そこへガイアの息子クロノスが現れ、母親の貞操の危機と思い、持っていた大鎌でウーラノスの局部を切り落とし海に投げ込んだ。
海の落ちたところから生じた泡から、愛と美の女神ヴィーナスが誕生する。』
というお話なんですね。
なかなかシュールな誕生の仕方だと思います。
本題に帰りまして…
そういう話をもとに絵を見てみると
明らかにこの〝誕生”のシーンではないことがわかります。
ではこの誕生したあとはどうなったのか?
『生まれたばかりのヴィーナスを
西風の神ゼフュロスが陸地へと運んでいく。
やがてキュプロスという島に漂着し、この島は女神の聖地となります。
そして季節の女神ホーラに衣を着せられると、神々の宮殿へ連れてゆかれる。』
ということで、この絵は
ヴィーナスが地上に降りったシーンが描かれているのです。

中央のヴィーナスの右隣の服を着せようとしているのが、季節の女神ホーラ。

そして左の風を送っているのが西風の神ゼフュロス
その横にいるのが彼の妻で花の神のフローラです(先ほどの《春》にも登場した二人です)。
それとなぜ、帆立貝に乗ってるのかという件について…
帆立貝は繁殖力を表していて、これはヴィーナスの象徴のアイテムの一つでもあるからなのです。
この〝絵画=宗教画(キリスト)″時代に
ギリシャ神話の神々を描くこと・女性のヌードを描くこと
というタブーを破ったこの作品。
ここにあるのはある種の官能の世界であり、『神秘』と『俗』が入り混じる背徳をも感じます。
この時代以降は芸術は宗教から解放され、絵画は美を鑑賞されるものとなります。
もちろん後世の人々はこの絵の意味(誕生のシーンではないこと)を知りながらも、新たな芸術の誕生の意味をこめ《ヴィーナスの誕生》と名付けたのではないでしょうか。
ちなみにこのヴィーナスにはモデルがいたといわれています。
ロレンツィオの弟の恋人シモネッタといわれる女性。
ボッティチェリの中で、彼女は理想の女性として多くの作品にその面影を残しています。
いかがでしたでしょうか。
外食をしたときにでも、また改めて絵を見て頂けたら面白いと思います。
ウンチクを披露する場合は
かいつまんでお話することをお勧めします。。。
ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!
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