官能の画家クリムトが見つけた、たった一つの愛

2018-01-25

小松絵画教室 暇つぶしの美学

 

芸術家にとって、必要なものは何か。

技術・才能・運・継続できる努力…

そんなことを考えていると、私は昔に読んだ本に書いてあったセリフを思い出します。



『恋をしないクリエーターほど、つまらないものはない』




もちろんこれは賛否両論あると思います。

ですが
やはりいろいろな芸術家のことを知っていくと、やはりそうであるなぁと思うとこがあります。


今の時代のように、あらゆる刺激や
新しいものがものすごいスピードで生み出されるような時代ではなく

そんな中"恋や愛"が今よりも尊く、崇高な世界を感じるものだったのでしょう。

ある出会いが人生をかえてしまう。
そして芸術家たちは、その想いを作品にして永遠にしてしまうのです。

きっと一度は見たことがあるこの絵の作者。

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今回のテーマは
《官能の画家クリムトが見つけた、たった一つの愛》









●クリムトとは…

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グスタフ・クリムト

グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)
19世紀末ウィーンを代表する画家。
金細工師の家庭に生まれ、17歳ころより室内装飾の仕事を始め
のちに美術と工芸を組み合わせた新しい装飾を創り、絵画・建築・家具など多方面にわたり才能を発揮。
様々な仕事を経て装飾家として名声を得ます。

絢爛な装飾を用いて「愛」や「性」、「生と死」をテーマとする作品を数多く制作しました。


クリムトが活躍した19世紀末のヨーロッパ諸国は保守派・革新派が入り乱れる混乱時代。

芸術界も例外ではなく、保守主義的な画壇に反発した芸術家達による《ウィーン分離派》と呼ばれる集団が誕生します。
クリムトは当時、その集団のリーダーとなります。



●女性の官能に魅せられて…

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クリムトは上流階級の婦人たちの肖像画も描いています。

現実世界の様々な女性を描きながら、彼の心は女性の官能的なあやしさというものに魅せられていきます。



しかし、当時の保守的なウィーンには、クリムトの画風は簡単には受け入れられたわけではありませんでした。

ウィーン大学講堂の天井壁画の制作の時、クリムトは女性の裸体を配置した前衛的なデザインを描いていました。
すると大学から『これはポルノだ』と猛抗議を受けたのです。
嫌気がさしたクリムトは、契約を破棄し制作を中止するという事件も起こっています。



今、クリムトの絵というと金色の絵、というイメージが多いかと思います。
この作風になった背景には一人の女性の存在があります。


クリムト35歳、アルマ・シントラ―との出会いです。






●伝説の魔性の女

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アルマ・シントラ―

クリムトが最も心奪われた女性
彼女の名はアルマ・シントラ―。

後にウィーンで最も美しい女性といわれ
数々の名だたる芸術家と浮名を流した彼女。
〝男を誘い、ついにはその身をさえ滅ぼしてしまう魔性の女″といわれるようになるのです。


父親が画家という家庭環境だった為、幼いころから彼女の周囲には多くの芸術家が出入りしていました。
芸術家として成功していたクリムトもその一人で、二人はすぐに恋に落ちます。
この時アルマは17歳。


しかしこの時クリムトには別に子供がいたこと、さらに他の多くの女性の影…
アルマの両親は交際を反対。

二人の恋は終止符を打たれ、その後アルマは
あの大作曲家グスタフ・マーラーと結婚するのです。


この大失恋はクリムトに大きな痛手を残し
彼の作風は金色の幻想世界へと変化していきます。






●ファム・ファタールを追い求めて

この頃クリムトの傑作の一つと言われる作品が完成します。

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《ダナエ》グスタフ・クリムト

それがこの《ダナエ》という作品。
目を閉じ、恍惚としている女性の体内に黄金の雨が降り注いでいます。


これはアルマをモデルにした作品で
クリムトが描いた中でもっとも官能的な作品だと言われています。



ダナエとは神話の中にでてくる娘で、これは神話の中の一場面。

ダナエの父・アクリシオス王はある時
『お前は孫に殺される』
という予言を受けます。

ダナエという一人娘がいたので、アクリシオス王は彼女を塔に閉じ込めますが、ダナエは美しい女性であった為
ある日、ゼウスの目にとまってしまいます。

しかし、彼女は鉄壁の塔の中。
そのためゼウスは黄金の雨に姿を変え、彼女と交わり
やがて息子が生まれる…

そんな話の場面なのです。



彼のアトリエにはモデルや娼婦が出入りしていました。
女性たちを描き、束の間の関係をもちながら
次第に官能の世界におぼれていきます。


しかしいくら描いても彼の心は満たされず
幻の女に対する思いはより一層、強くなるばかりでした。



そんな中、彼はようやく〝運命の女性″と出会うのです。






●欲望の対象外な女性

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エミーリエ・フレーゲ

弟の結婚を機に、クリムトは一人の女性と出会います。
それがエミーリエ・フレーゲという女性

弟の妻の姉がエミーリエだったのです。



彼女はウィーンでブティックを経営していて
当時としては珍しく、経済的にも精神的にも自立した女性でした。

そんな彼女をクリムトは心から尊敬していました。


徐々に親交を深めていった二人は
毎年夏になるとエミーリエの別荘で一緒に過ごすようになります。

クリムトにとって唯一、一緒にいて心安らげる人だったのです。







●描けなくなったクリムト

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順風満帆なクリムトの芸術家生活でしたが
ある夏、クリムトは制作に行き詰ります。



絵が描けない日々が続く…これは画家にとって誰しも一番辛いことです。




そんな彼を救ったのはエミーリエでした。


ある日エミーリエはクリムトのアトリエに入り、あることをしました。

それは何か?


それは、手つかずの真っ白なキャンパスにそっと金箔を貼ったのです。



彼女の置いた金のキャンパスを見たクリムトの目には
官能を魅せる女性を彩り描き続けた黄金とはまるで違う輝きを放っていました。


官能と宿命の象徴である激しくも妖しい金色ではなく
まるで包み込まれるような穏やかな輝き―――




クリムトはそのキャンパスに《成就》という作品を描きます。


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《成就》グスタフ・クリムト

この絵では、抱き合う恋人が黄金色の優しい光に包まれている
この女性は男の腕にすべてをゆだね
一時のそして永遠の時のなかの幸福感のようなものまで伝わってくるようです。



そこには誘うような、挑むようなまなざしをした
〝幻の女″の姿はもういませんでした。









●最後の黄金の世界

そしてクリムトは代表作《接吻》を描きます。

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《接吻》グスタフ・クリムト

崖の手前で抱き合っているふたり
そこは楽園の終わりを意味しているといわれています。

崖の手前で跪いている女性は、これ以上の幸福感はないという
極限の状況で踏みとどまっている―――
成就した究極の愛をこの女性は語っているのでしょう。


《接吻》は大絶賛され、それまで革新的・大胆な表現で
激しい批判に晒されていたクリムトの作品は、社会に受け入れられるようになりました。







この作品はクリムトとエミーリエ自身だといわれています。


二人は恋人同士でした。

しかしプラトニックな関係をつらぬきました。

それはクリムトがエミーリエを尊敬するあまり、欲望の対象にはしなかった
のではないか、といわれています。



そんな背景を見ていくと
この《接吻》という絵は永遠の幸福の傍に、どこか
悲しくもしかし美しい愛の形を感じます。

《接吻》以降、クリムトの絵からは徐々に金という色が消えていきます。

翌年の絵の背景は青く塗りつぶされ、青、赤や黄色といった
自然の色が登場するようになります。



そしてクリムトは二度と
あの黄金の色を使うことはありませんでした。



1918年
クリムトは病に倒れます。

彼が最後に残した言葉は

『エミーリエを呼んでくれ』


56歳の生涯でした。











いかがでしたでしょうか。


人は一人では生きられません。

誰かを求めるのは本能でもあります。


この世で自分を受け入れてくれる人は数多くいるでしょう。

ですが


自分のことを〝どこまでも理解して傍にいてくれる人″
というのは、どこか夢物語のようなところがあります。



私は今回クリムトの話を書いていて
人として理想の関係だな、そう思いました。


女性から見ると
果たしてエミーリエは幸せだったのか…

そんな疑問があるのかもしれません。



しかしこの二人の関係を、言葉にする必要なんてないのでなないでしょうか。


もしエミーリエとの縁がなければ
あの傑作も生まれることなく
クリムトの最後は悲惨な結末だったかもしれません。


芸術家の人生を覗いてみると

神様は面白いことをしてるなと、つくづく思います。



ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました。




 


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