なぜ日本人の心にしみる?画家ミレーの作品

2017-10-11

 
小松絵画教室 暇つぶしの美学

 

日本画、西洋画…

近代画家の作品達は
『この作品は日本画?それとも油彩画?』
と、わからないことがとても多いように感じます。

最近は使う道具(絵の具など)で区別したりしています。


昔の日本画というのは誰が見ても一目瞭然、という感じですよね。

それはなぜか。


技法、構図、道具などはもちろんですが

そこには日本人の精神に沿った絵が
描かれていたからだと思います。


今回のテーマは

『なぜ日本人の心にしみる?画家ミレーの作品』



世界のみならず、今でも日本でも人気が高い
ミレーという画家を取り上げたいと思います。






●農民画家・ミレー


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ジャン=フランソワ・ミレー

ジャン=フランソワ・ミレー
19世紀のフランスの画家。


今でこそ農民画家として有名ですが
有名画家になることを夢見た田舎育ちの彼は
22歳頃からパリへ出て、画家ポール・ドラローシュより
デッサン、模写をはじめ、聖書や神話などの古典を多く学ぶ。

この頃のパリでは他に、神話画なども多く手がけていたようです。


しかし生活は貧しく
肖像画や裸婦像を描き生活を工面していました。


1849年パリではコレラが流行し、
パリの南方にあるバルビゾンという田舎に移住します。



この時、彼は35歳。

妻や数人の子供たちをかかえながらも
この地で農民画家として生きることを決意します。


そしてある絵をきっかけに





彼の運命は大きく変わっていきます。








●混乱の時代に生まれた絵


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ジャン=フランソワ・ミレー 《晩鐘》

ミレーの代表作《晩鐘》
労働を終えた農家の夫婦が、神と祖先に感謝の祈りをささげる様子を描いた作品。

二人の足元にあるのはジャガイモのかご。
当時、貧しい人の主食はジャガイモでした。

この絵は、貧しくとも、清く、正しく、生きようとする
キリスト教信者の日常が、静かなタッチで描かれています。

《晩鐘》は2年の歳月をかけて完成された作品で
当時のミレーは家族をかかえ、その日の食べるものにも困る生活をしていました。


そんな中、この作品は家族を養うために売りに出されました。






しかし、
この作品が大きな波紋を呼びます。






この頃のフランスは産業革命によって貧富の差が拡大し
のちに農民や労働者が、都市の裕福な人々に暴動を起こす…
そういう混乱の時代でした。

ミレーの《晩鐘》をはじめ農民たちの暮らしを描いた絵は、農民や労働者たちから支持されましたが
都市の裕福な人々には『貧しさを誇張し、社会秩序を脅かすものだと』糾弾されます。



しかし、この時の権力者ナポレオン三世はこの問題に目をつけます。




国民の大多数を占める農民の支持を得るために
彼はミレーの作品を利用するのです。







●念願の人気画家に!しかし…

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1867年、パリ万博でミレー展が開催されます。


なぜ社会問題にもなった無名のミレーが?



それは、農民たちに支持されていたミレーの《晩鐘》を
大々的に公開し、評価することで
農民たちの支持を確固たるものにすることを目的とした、ナポレオン三世によって開催されたのです。



政府のお墨つきをもらい、当時の写真製版技術によって
一般家庭まで瞬く間にミレーの《晩鐘》は広まっていき
とうとう国を代表する人気絵画となります。



そうして絵の価値は、当時最高クラスの価格まで上がっていきます。



絵の価値とはうらはらに
ミレーの心境は複雑なものになっていました。

家族を養うためとはいえ、
絵が政治的に利用されることを
最も嫌っていたのはほかならぬミレーだったのです。




ミレーは、日々大地に祈りをささげ、汗を流し懸命に働く農民の姿を主題とし、数々の作品を描いていました。
それは彼が、労働そのものを崇高な営みとして、とらえていたからこその絵であったのです。


彼はいつまでも、
純粋に絵画としての価値を評価されることを望んでいました。


1875年
ミレーは60歳でこの世を去ります。




ミレーの死後、フランスのみならず
世界中でミレーブームが起こります。




そしてこの《晩鐘》を手に入れようと

国同士の争奪戦が始まります。




●アメリカVSフランス 買い取り大争奪戦


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1889年《晩鐘》はオークションにかけられることになります。

この作品をなんとしても手に入れたいと考えていたのは
フランス、そしてアメリカ。

フランスは再びパリ万博が開催される事が決まり
《晩鐘》を国で買い入れ、国のシンボルとして展示しようと考えていました。


対するアメリカ。


なぜアメリカが?

それはプロテスタントが、荒野を開拓してつくりあげたアメリカでは
ミレーが描いたキリスト教徒の姿が、
熱烈に受け入れられていました。


プロテスタントは十字架しか装飾品は置かなかったので
清く貧しい農民の姿を描いたミレーの《晩鐘》を
祭壇画として手に入れたかったのです。


それぞれの想いを胸に


ついにオークションは始まります。



30万フラン(大体3億円)からのスタート





33万…38万…




40万…45万…



どんどん値はつり上がっていきます…


そして



ついにアメリカが




55万フランというとんでもない額を提示!!




もう両方の予算は限界―-----…



しかしなんと


フランスが声を上げます






『55万3000フラン!!』










そうしてフランスが見事落札!


しかし…

喜びも束の間…






フランス政府が当初の予算をはるかに上回っていたので
支払いを拒否したのです。








《晩鐘》はなんと

見事、アメリカの手に渡ります。


その後、アメリカでは各地で展覧会が開かれ

ミレーの大ブームが起こります。






しかし今、この《晩鐘》はパリにあります。



一体何が起こったのか?





それはフランスのデパート王、アルフレッド・ショシャ―ルが



なんと



自身の私財を投じて、絵を買い戻したのです。




そのときには絵の値段は8億円にもなっていたという…



のちに彼はこう言ったそうです。

 
《晩鐘》は国の宝。祖国フランスにあるべきだ。』






そういう想いのなか

《晩鐘》は祖国フランスに帰ってきました。








●《晩鐘》は日本でも…

実はこの作品は日本でもなじみが深く

1928年には《晩鐘》の挿絵とともに
ミレーの伝記が教科書に登場します。


もともと日本人も農民が大多数を占める国でした。



この《晩鐘》はフランスの風景ですが

どこか日本の風景、精神にも通ずる作品であること

時代が変わっても、政治体制が変わっても


何かを感じずにはいられない不思議な魅力のある作品です。





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ジャン=フランソワ・ミレー 《昼寝》



山梨県立美術館は
ミレーの美術館として親しまれています。

是非、本物のミレーに会いに行ってみてはいかがでしょうか。







今回はミレーについてお話しました。








この記事を描くのに
改めて、ミレーの《晩鐘》を見ていたのですが


この絵はまた今の時代、必要なのではないか…
そう思わずにはいられないのです。





絵というものは時代を超えて様々なことを教えてくれます。


技術や生産性が発展していき
おかげで過去とは比較にならないぐらい便利になりました。

未来はさらに今とは比較にならないほど、技術が進歩していくことでしょう。



ですが、人間はどうでしょうか。

人の悩みや、苦悩、幸せになりたいと願う想いは
いつの時代も、これから先も

いつまでも変わることはないように感じます。



問題の形は変わっても、それは人の永遠の課題なのかもしれません。



ミレーのこの静かな《晩鐘》を見ていて

それぞれの宗教観はどうであっても

人が失ってはいけないものが
ここには描かれているような気がしてなりません。



ですが、決して押し付けがましくなく
純粋で崇高な一瞬の時間を切り取ったこの作品は

疲れた心に沁みるように、ただ深く、包みこんでくれるようにも思います。



時代も、国も、宗教観も超えて
純粋に感動できる

ミレーの望んでいた事が後世にはしっかりと伝わっています。




ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!









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